哲ノート

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片棒 -鈴本演芸場九月上席-

9月の寄席は上野・鈴本から・・・

鈴本演芸場九月上席昼の部」は主任(トリ)は柳亭市馬師匠で、ほかに聴きたい師匠の出番もあり顔付けの良さで期待を込めて、

いつものように最前列に陣取って、ライブ感を味わいつつ大いに楽しみます。

開口一番は「子ほめ」から。前座さんが良く演じる演目ですが、以前に“人間国宝五街道雲助師匠が「子ほめ」を演じている場があり拝聴したしました。

この時は同じ演目(噺)でも、場数を踏んでいる師匠の話に聴かせるチカラがあるなぁと納得したことを憶えています。「子ほめ」という演目も長年演じていけば“自分のもの”になっていくのかなぁと思います。

つづいて「本膳」「反対俥」(馬石師匠の前のめりになっての大熱演)「平林」(ひさびさ聴きました)「鼓が滝」「妻の旅行」三遊亭圓歌師匠で「龍馬伝」で爆笑の渦のなかお中入りに・・・。中入り後は「あくび指南」「お菊の皿」(雲助師匠)そして主任(トリ)は柳亭市馬師匠で「片棒」で終演

噺の合い間の色物さんも太神楽・漫才・奇術(目の前でのロープ芸は・・・いまでもわからん)粋曲(小菊師匠で「さのさ」)で観客をおおいに沸かしなごませ、

“何が飛び出すか”と寄席の芸を楽しませてくれます。4時間あまりの興行ですが、とても中身の濃い演目が続きました。

主任の市馬師匠が演じた「片棒」という落語は、実はあんまり好きな演目ではありませんでした。赤螺屋吝衛門(あかにしやけちべえ)の跡取りとして3人の息子が自分の弔いをどうするかを試そうと聴きとるのですが・・・どうしてもしゃべくりが多くなる噺で、その奇想天外な噺をだらだらとしゃべる段で中だるみがあって、なんか面白くないんですよね。

ただ今回の市馬師匠の「片棒」はさらっと軽快にテンポよく、時には口で鳴り物をいれてにぎやかに演じて、一気にオチの「あ~心配すんなぁ、片棒はオレがかつぐ・・・」ってことで大団円(ひさびさオチまでしっかりと聴かせていただきました)

前座噺の「子ほめ」もそうでしたが、やはりどんな演目でも、それを聴いていて確かな話芸でありふるまいであり、目配せ、テンポといった細かな点が、演者に寄っておおきく異なり、聴く側にどう伝わるかが明瞭に異なってきます。そこのところをみごとに「聴かせる芸」を演じる師匠方の芸には、やはり聴き惚れちゃうわけですよね。今回の「片棒」のような演目でも人となりの聴かせ方、聴き方があって印象が変わります。

このような“定番”の演目はやはり演者ひとりひとりの個性、話しっぷり、演じ方ひとつで大きく変わるものであると、改めて感服しました。